おのぼりさんローマへ

6月8日、午前9時ごろから停電になってしまいました。

前夜ひどい雷をともなう風雨だったので、どこかで電線が切れたりしたので修復中なのだろうと思います。
でも、たいていの仕事は昼食の支度を始める頃には終わるのがここイタリアです。

全ての家庭で昼食は大切な時間ですし、工事作業員の方達もお昼を食べなければなりませんから。
そう思ってメルカートを覗いたり、ブドウ畑の掃除をしたり
つまり電気のいらない仕事をして修復が終わるのを待っていましたが、
午後1時半になっても復旧しません。
これは尋常のことではありません。きっとかなり大掛かりな仕事なのでしょう。

電気がないと掃除機も洗濯機も使えないのは当たり前ですが、我が家の水源は井戸。
深い井戸からポンプで水をくみ上げています。
つまりそのポンプが働かないと水も使えないということなのです。
ということはトイレにも支障をきたしてしまいます。

そして何よりもテレビもプレイ・○テーションも使えない息子は
どうして時を過ごしていいかわからない様子。

そこで、久々にローマへ行くことにしました。

「マンマ、素敵なギターを見て少しの間ゆめを見たいんだけど。」
という息子の希望をかなえるために。

蛇足ながら停電だと門も自動では開きません。
手動であけて鎖を巻きつけて鍵をかけておきました。

 

かつては近くにスーパーマーケットがなかったこともあって、
しょっちゅうローマへ行っていたものですが、
最近は年に1度か2度しか行かないくらい足が遠のいています。
車に乗ってしまえば1時間の距離なのに。

ローマの最大の問題は駐車場が不足していることです。
「2重駐車なんかしないよ。だってもう2重目はいっぱいなんだもの。」
というくらい。(笑)

そこで、町に入って最初に見つけた隙間に駐車して、
2時間分の駐車券を買っておきました。
場所はテルミニ駅のそばで、ホテルやレストランがたくさん並んでいるところです。
 

ローマの中心地は1時間もあれば端から端まで歩いて行くことができます。
目当ての楽器店はヴェネツィア広場の近くにあります。
テルミニからヴェネツィア広場までは1.5q位でしょうか。

でも息子がそこへ行く前に○ッグ・バーガーで
腹ごしらえをしたいというので、遠回りにはなるけれど
先にトリトーネ通りの○ッグ・バーガーへ向かいました。

歩き始めて程なく、サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会が見えたので、
息子に素晴らしい彫刻を見せようと寄り道をしました。

この教会の左奥に、かのジャンロレンツォ・ベルニーニ作
「恍惚のテレーザ」が今も幸せそうに神の威光に打たれているのです。

そこからビソラッティ通りをくだり-バルベリーニ広場-にたどり着きました。
この広場の真ん中にもベルニーニの作った「トリトーンの噴水」があるのですが、
残念ながら水の勢いが悪くてかつての趣には及びませんでした。

その残念な姿を写真に収めて、そこから始まるトリトーネ通りを下っていきます。

 
この通りにも新しいホテルがお目見えしたかと思うと、
ブティックの名前が変わっていたり、ガイドをしながら
毎日のように通っていた頃とはずいぶん変わりました。

トリトーネ通りを2/3くらい進んだところに○ッグ・バーガー
があります。

小さい頃はおもちゃを目当てにマク○ナル○へばかり
行きたがっていた息子も、最近ではおいしさで
決めるようになったようです。

少し御行儀は悪いですが、時間がもったいないので
息子には歩きながらハンバーグを食べてもらい、
目的の楽器屋さんへ向かいます。


でも、途中に-トレヴィの泉-があり、
ご覧のようにたくさんの世界中からの観光客の方々が
集まっていたので、思わずパチリ。

この泉にコインを後ろ向きに投げるとまたローマに戻って
くることができるといわれています。

初めてここを観光客として訪れたとき、
しっかりその儀式を行ったところ、
なんと効き目が強すぎて戻っただけでなく
居ついてしまったというわけです。

この付近のお店もずいぶん変わりました。

でも、昔懐かしい知り合いに出会い、
しばしの旧交を温めることができました。


そしてやっと目的のお店にたどり着いたかと思いきや、無い。
お店はなくなってしまっていたのでした。

あせる私を息子が呼びとめ「こんな張り紙があるよ。」

よく見るとその張り紙の日付が2003年のものでした。
とにかく移転先を書いておいてくれたので、そこからまた1q弱のアルジェンティーナ広場まで歩きました。

このアルジェンティーナ広場の周りにはかつては繊維やさん生地やさんばかりが軒を連ねていたのですが、
最近は少し少なくなってきたようです。

やはりかつての大きな生地問屋だったところにその楽器やさんが取って代わっていました。
しかも、ここまで楽器屋さんと書いてきましたが、本屋さんに様変わりしていました。

たくさんの本と、ミュージックCDを売るお店になっていて、
楽器はバイオリンとギターをそれぞれ申し訳程度においているだけ。
楽譜など一編もありません。

がっかりした私とは違い息子は早速好みのグループのCDを視聴しています。

あまりの様変わりに念のため年配の店員さんに聞いてみたところ、
確かにかつて11月4日通り (ヴェネツィア広場の近く) にあったお店に間違いは無いということです。
その店員さんも懐かしそうに 「ああ、あそこを覚えてくださっているんですねぇ。」 と言っていました。

さらに楽器類は全てコルソどおりの店に移したとのことでしたが、
またコルソ通りまで歩く元気は無く、しかも車を置いたところまで戻らなければならないので、
今回はあきらめてまたの機会にということで息子に納得してもらい、
テルミニへと向かいました。

いくつかの通りがありますが、できるだけモニュメントがあって坂のゆるいところを選んで帰ろうとしたら、
大統領官邸のそばを通りかかり、しかも吹奏楽が聞こえてきたので、
衛兵の交替式の最中であることを思い出した私は息子をせかせて官邸前広場へと駆けつけました。

かつてよく一緒に仕事をしたいたイタリア人ガイドが、
「子供の頃は毎日この時間にここへ来て交替式を見ていたものだ。」と言っていました。

いまや観光バスが止まれなくなってしまったせいか、昔のような人だかりは無く、
徒歩でやってきた観光客に混じって、われわれのようにたまたま出くわした人達が
交替式が終わるまでは広場を横切らせてくれないので仕方なく見物していると言う感じでした。

 

私には7年ぶりに見る交替式。
息子には目新しい、そしてかっこいい儀式。

よく耳にする国歌と
それぞれの隊の吹奏楽などの演奏を聴きながら、
兵隊さんたちの行進を写真に収め、

ああ、なんかすっかりおのぼりさんをしているなと感じたのでした。

決して田舎住まいを卑下しているわけではなく、
日本からイタリアへやってきて
故郷を遠くノスタルジックに思っていた私が、
今はまたローマを一種の感傷と共に見ていることに
なにか楽しい居心地の悪さを感じたのでした。

               Keiko